保育の予算について

昨年、みんなの党川崎市議会議員団は、嘉悦大学和泉研究室と討論型世論調査を実施しました。また、新年度はこども費の中で保育事業費がもっとも大きな予算になっていて、討論型世論調査の結果に基づき、質問しました。
川崎市は平成23年度から3ヵ年で第2期保育基本計画を進めて来ましたが、その最終年度の予算で、その結果を見据える予算になります。

保育といえば待機児童と言われるように、川崎市は待機児童数のワーストにランキングされる不本意な結果があり、そのイメージが先行しています。
しかし、待機児童問題があまりにも代表的で、保育に関する課題をどのように整理し、解決すべきかという点が曖昧になっています。

川崎市は年間1~5園程度の公立保育所の民営化を進め、最終的には各区3園の合計21園の公立保育所とする計画を進めています。
では、保育事業を市が直営しなければならないのでしょうか?

昨年の秋の決算審査特別委員会では、公営と民営の保育所では、運営経費に差があり、その差は人件費であり、民営化を促進すべきという指摘をしました。
認可保育所であれば、公営でも民営でも世帯所得に応じた保育料負担が示されているのが川崎市です。これまでの答弁では、「保育の質を落とさないように民営化を進める」とのことでした。
民営化すると保育の質が落ちるのでしょうか?
落ちるとしたら、同じ保育料を負担する認可保育所の基準に問題があるということになります。

今回の質問では、公営も民営も保育の質に差異がないということを答弁で確認した上で、現在進められている、「建て替え民営化」以外の方法で民営化を進めないかとの質問をしました。
建て替え民営化は、園舎の老朽化の時期に合わせ建て替えることで、建て替えを期に受け入れ枠を拡大できるため民営化しやすいという見解です。しかし、建て替え時期が中心ではなく、職員の退職動向が中心で民営化を進めているのが実情です。
公立保育所の運営費と人件費の合計約74億円を、昨年の決算時における公民比較に照らし合わせてみると、単純計算だと年間実に30億円も運営費が削減できるわけです。
今回、初めて、譲渡方式や貸与方式での民営化も検討するという答弁が来ました。
公立の保育人材を民間に放出する場合、あたかも失業を意味するようなイメージを持たれますが、待機児童問題に代表されるように保育ニーズが高い昨今、公立の保育士が失業すると言えるのでしょうか?

討論型世論調査の結果(図参照、T1が1回目、T2が2回目、T3が3回目と同じアンケートをとった結果の推移)に基づくと、子育て支援全体の予算を拡大すべきという結果が大きく、待機児童対策を最優先にすべきという考えは、議論を追うごとに少なくなりました。これは、待機児童ワーストのイメージが強くて、他の課題が見えにくくなっていることを意味しています。

また、保育基本計画の中では、ワークライフバランスの関係予算も計上されています。育児休業取得率向上や企業と連携した子育てのあり方を考えるという観点です。ワークライフバランスを考えることは、社会情勢を考えると、もっとも重要なテーマだと思います。しかしながら、現状は啓発活動が中心となり、育児休業取得率を取り上げてみても、効果を測定しているのは国のデータや市内企業に留まってしまうという実情があります。
予算規模も年間200~300万円程度で、まさに啓発予算になっています。
国によっては、育児休業の休業補償制度があったり、父親の育児休暇取得日数が義務付けられていたりと努力目標ではなく、厳格な目標が定められているところもあります。
わが国では、企業の育児休暇は、制度としては存在するものの、最低限の取得だけで留まっていたり、そもそも取得しにくい環境があるということも言えます。
「企業の協力」が必要であると同時に、「企業の社会的責任(CSR)」において行うこと、また、企業にとって社会的責任を果たすメリットがあるような制度を作ることも必要です。

保育と一口に言って、待機児童解消に目が行き、単純に保育所の数を増やせばそれで解決というようなイメージを持たれています。
しかしながら、「保育に欠ける児童」なのかどうか、また、社会環境の整備に時間がかかるということは単に意識の問題ではなく、制度面に実効性があるのではないか、広く議論を進めるべきです。

最後に、子ども・子育て新制度が進められる中、これから、いろんなところで「調査」が行われます。Webやペーパーでの単純なアンケートではなく、討論型世論調査のように、参加者に情報提供し、考えた上での結論を集計できる「調査」を進めるべきです。