子どもたちのマスク着用についてvol.1学校編

2年以上に及ぶコロナ禍で、感染症対策でのマスク着用が常態化している一方、夏季においては、熱中症リスクが高まるため、屋外でマスクを着用しないことが推奨されています。

特に4月以降、政府の見解が緩和に動いている背景には、専門家が、屋外でのコロナリスクは「ほぼない」という見解を示している一方、熱中症リスクが高まっているという、ゼロリスクが存在しない中で、ただちに命の危険が迫る熱中症予防を優先すべきということからです。

文部科学省は昨年の夏も同様に屋外や運動時のマスク着用の不要を示していましたが、街ゆく子どもたちの多くがマスクを着用しています。

 4月以降、学校におけるマスク着用について、熱中症予防を優先し、屋外や運動時は「原則不要」になっているにも関わらず、学校によって運用が異なるという実態に一つ一つ是正させるべく努めて来たものの、実際の運用が統一されていないため、質問に至りました。

 2回に分けてブログで書きますが、今回は教育委員会向けの質疑です。

 以下、質問要旨と解説です。

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質問1(5月18日の小田嶋教育長による動画発信について)

学校における熱中症対策での児童生徒のマスク着用について次のように確認している。

・令和3年3月市教委「川崎市立学校熱中症対策指針」

・令和3年5月28日政府「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」

・令和4年4月15日市教委「市立学校における教育活動ガイドライン」

・令和4年4月28日市教委「熱中症事故等の防止について(依頼)」

・令和4年5月18日市教委「学校におけるマスクの着用について」教育長動画

・令和4年5月24日文科省「学校生活における児童生徒等のマスクの着用について」

・令和4年6月10日文科省「夏季における児童生徒のマスクの着用について」

このように、屋外・運動時のマスク着用についての通知が重ねられている。実際に、熱中症リスクとコロナリスクのともにリスクがゼロではない中、ただちに子どもの生命のリスクに関わるため、熱中症リスクの高い場合のマスク着用の原則不要を教育長が自ら動画で発進したことについて、どのような想いで作成に至ったか?

答弁1(教育長)

 教育活動ではマスク着用を原則としているが、マスクの着脱については様々な考え方があり、学校での統一的な取組が難しい面があった。しかし、熱中症の危険性が高まってきたことから、文部科学省のマニュアルに基づき、川崎市としての基本的な考え方をわかりやすき表現で保護者や市民に伝え、各学校に対し、体育の授業時等での適切なマスクの扱いについて、「改めて」依頼した。

質問2(保護者向けの通知)

 運動時・下記登下校時のマスクの着用について、「原則不要」になっているが、学校からの保護者向けの通知は、「原則不要」「外してもよい」「保護者向けに通知していない」の大きく3つに分かれている。「原則不要」と「外してもよい」は基本的な意味が異なるが、国語の教師でもある教育長に見解を伺う。

答弁2(教育長)

 「原則不要」は基本的にマスクを必要としていないとする表現であり、「外してもよい」は基本的にマスクの着用を必要とする表現であると認識している。

質問3(保護者向けの通知の問題について)

 「原則不要」の通知を出した学校以外、「外してもよい」では表現が異なるし、そもそも「保護者向けに通知していない」という学校は健康教育の観点から大きな課題があるのでは?

答弁3(教育次長)

 6月10日の文部科学省通知分を踏まえ、体育・部活動・登下校の三つの場面では特に熱中症リスクが高いため、マスクを外すよう指導するとともに、保護者に理解と協力を求めるよう「改めて」各学校に通知した。

質問4(マスクの着脱指導について)

 6月15日の自民党の代表質問に対し、「教師のマスクの着脱について、状況に応じてマスクを外して見せる等の対応もはかりたい」という趣旨の教育長答弁があった。しかし、これまでの通知で運用されていない学校があるため、この答弁通りいかない学校が出て来ることも危惧される。すべての学校・教師に徹底するべく、どのように取り組んでいくか?

答弁4(教育長)

 児童生徒のマスク着脱については「熱中症が命に関わる重大な問題であること」を認識した上で、適切に指導することを周知徹底するとともに、教師についても、熱中症事故防止の観点から、例えば発生を伴う指導が無い時間帯は、体育の授業等でマスクを外すなど、状況に応じて対応するよう、研修等の機会を捉え、周知していく。

【解説】

 質問1で、コロナの考え方が様々ある中で、学校での混乱を避けるため、文部科学省のマスク着用についての考え方として屋外や運動時のマスク原則不要を教育長が動画発信。通知だけでなく、動画により保護者にもわかりやすく教育長から改めて説明したことを確認しました。

 質問2・3では、学校から保護者への通知が学校ごとで異なっていたため、マスク着用についての周知の問題を指摘しました。「原則不要」「外してもよい」の意味の違いの分からない先生に教わりたくないという厳しい想いと、敢えて「外してもよい」としたら、健康教育において学校で違いがあることが問題です。さらに、保護者に通知していない学校は、一部の保護者の批判的な声を恐れてのことで、子どもの命を守るという最優先事項について理解が乏しいと言わざるを得ないため、非常に大きな問題です。

 質問4では、6月15日の代表質問での「状況に応じて教師がマスクを外して見せる等の対応をはかる」という教育長を実際にやらない学校が出て来ることが危惧されるため、その対策を尋ねました。教育長が「熱中症が命に関わる重大な問題であること」を認識した上で対応していくという答弁でした。全体では変わり映えしないように見えますが、感染症予防よりも「熱中症が命に関わる重大な問題」と表現を強調していることで、教育委員会によるマスク着脱の方針の背景には「命に関わる重大な問題」として各学校に改めて伝えていくという意向が示されました。

 裏を返せば、この方針を守らない学校は、子どもの命を危険にさらしているのだという厳しい表現とも取れる重い答弁でした。

 一刻もはやくすべての学校・学級が徹底されることを強く要望しました。

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著者について

月本琢也 ツキモトタクヤ

1978年生まれ。神奈川大学卒業後、建築設備メーカーの営業マン、川崎市長阿部孝夫政務秘書、衆議院議員山内康一第二秘書(麻生区担当・国会担当・自民党→みんなの党)等を経て、2011年より川崎市議会議員(麻生区選出、当選3回、現在無所属)。交渉会派団長2回、議会運営委員会委員、川崎市農業委員、川崎市都市計画審議会委員等を歴任。今年度は文教委員会委員を務めている。13,000人の職員を巻き込んだ決算議会改革の実現、防犯カメラ設置補助事業の導入の実現など、ICT・コミュニティ・実効性から、SDGsのゴールを含めた持続可能なまちづくりを目指す。その他に、防災士、神奈川県クッブ協会代表理事等を務める。